重症度1:筋萎縮をみるが、日常生活にまったく支障がない。
2:精巧な動作のみができない。
3:介助を要せずに自分で何とか運動や日常生活をやっていける。
4:介助をすれば日常生活がかなり良くできる。
5:介助をしても日常生活には大きな支障がある。
6:Bedriddenの状態であり、自分では何もできない。
7:経管栄養または呼吸管理をする。
(ADL自立:重症度1−3度)
外来通院の時期であり、OTは生活指導中心となる。目的は残存機能を有効に使いADL自立を維持することであり、仕事は出来るだけ続けるように職場の環境調整などのアドバイスが必要なこともある。
A.機能維持、廃用性低下の防止
@筋力維持訓練:この時期には重錘バンド、セラバンド等を使用した抵抗運動も可能である。抵抗量、運動回数などをチェックすることにより、耐久性の指標ともなる。筋疲労 は避け、少なくとも攣縮が起きたらすぐに休息をとる。
筋力回復を望み、過剰な運動を行う場合があるため、筋疲労の回復を指導し、運動回数など具体的に設定するとよい。
AROM訓練:自動介助運動が可能。肩の支持性が低い場合は、亜脱臼に注意する。
B耐久性:1日の活動量やホームエクササイズの指導。
CADL訓練:手指の筋力低下が著明な例では自助具、装具を適応する。生活動線のスムーズ化をはかり、適用を防ぐ。
B.社会生活上の環境整備
勤務条件・環境整備などへのアドバイスを行う。勤務先との連携をはかり、勤務時間の変更や、配置転換などにより過用を防ぐ。疲労の回避の必要性に対する上司・同僚が望まれる。
C.アクティビティー
気晴らしなどの他に、筋力維持を目的とすることもある。革細工、マクラメなどはピンチ力維持にもつながる。また、ワープロ、コンピューター操作は、将来的なコミュニケーション障害への準備ともなる。
(ADL介助:重症度4〜5度)
入院となることが多い。この時期の目的はADLのレベルを維持するよう努めることであり、また精神、心理的支持のため生活の変化や楽しみを与える趣味活動や外出訓練などに重点を置くべきである。
A.機能維持、廃用性低下の防止
@筋力維持訓練:筋疲労は避け、少なくとも攣縮が起きたらすぐに休息をとる。筋力は3レベル程度の低下がみられ、自動運動、自動介助運動が主体となる。
AROM訓練:他動的関節運動が主体となり、家族指導も行う。将来食事動作やワープロ操作にスプリングバランサーを適応させる場合、肩関節の水平内外転、肘関節の屈伸、手指の屈伸を保つことは重要である。
B耐久性:訓練、アクティビティーなどの持続時間で調整する。
CADL訓練:自助具・装具の適用を行い、可能な限り自力で行える範囲を拡大する。特に食事は自力で行いたいというニードが高いと言われる。また困難な動作は介助者への介助法、自助具・装具の使用法の指導が必要である。移動・移乗動作、起居動作の他、上肢挙上困難に伴い更衣、整容動作にも介助を要することが多い。
B.自助具・装具の検討
機器の導入、特に身体障害者手帳・難病特定疾患による補助を受ける場合は作製や購入に時間がかかる。そのため早めの準備が望ましいが、「まだできているから」と拒否的な患者も多い。主治医から今後の病状の変化を説明してもらい、患者が十分納得したうえで取りかかる必要がある。
@手の操作:把持装具、コックアップスプリントなどにより手指対立位や手関節の調整を図り、ピンチ機能を獲得する。
A上肢の支持:BFO、スプリングバランサーなどで肩、肘の機能を補助することにより、リーチ可能となり、食事、机上動作の獲得が望める。
B食事自助具:ピンチ、把持が困難な場合のユニバーサルカフ、食器保持困難な場合のすくいやすい食器などがある。
Cスイッチの工夫:電動車椅子のレバー把持が困難な場合ベルトなどで固定するほか、頸、足部などを活用することもある。ナースコールも上肢、足部、頚部など可能な動力源を活用する必要があり、固定などの工夫が必要、わずかな力で押せる、タッチスイッチや引いて使うプルスイッチが有効なこともある。
D車椅子の制作:将来の機能低下を見越し、電動タイプでリクライニング式のものが望ましい。
E頚部・体幹保持の装具:ネックカラーなど。
C.コミュニケーション手段の確立
@書字:装具・カフ付き鉛筆の適用で書字が可能な場合がある。
A機器:トーキングエイド、コンピューター、電子手帳などの操作をこの時期に導入することは、将来呼吸器管理となったときに実用化が容易となる。主治医の病状説明の状況を踏まえ、基本的な操作方法の取得を目指すと良い。患者のニードに合わせ紹介できるよう、OT自身が多くの機器の操作が出来ることが理想である。
D.嚥下方法の検討
嚥下障害が出現したら、食物の形状の工夫、姿勢の工夫などが必要となる。食事時間が長くなり栄養が十分に摂取できない場合は、経管栄養や胃痩造設への移行を検討する。OTの役割としては、実際に食事介助を行う家族や訪問看護、ケアワーカーなどにアドバイスをすることが主体となる。
@食物形状:半流動性で、小魂にまとまりやすいものが好まれる。乾燥したもの、ポロポロしたもの、張り付きやすいものは避ける。また、食事は楽しみでもあり、食品間の味を混ぜない工夫が必要である。
A姿勢:上体を起こす、頚部を横向きにするなど誤嚥の起こりにくい姿勢の工夫をする。
B介助法:スプーンや注射筒を利用して舌根部へ食物を送り込むことにより、嚥下しやすいこともある。STまたはOTが方法を検討した後に指導する。
E.精神的苦痛の緩和および心理的援助
患者本人のみならず、介助者も考慮すべきである。告知の有無に関わらず、精神的不安定になる可能性があるため、患者を受容することは重要である。また、同じ闘病者、介護者の助言も心強いことが多く、患者会であるALS協会の紹介も考えられる。
F.家族指導(介助法・公的資源の紹介)
廃用性低下の防止・二次的合併症の防止に対する訓練、管理法の説明を行う。ROM・筋力維持の運動は、自動介助運動を含むなど介助を要するため、家族に訓練場面を見学してもらい指導すると良い。
身体障害者手帳・難病特定疾患の申請、介護機器の紹介、家屋・環境整備の指導、福祉制度・マンパワーの紹介など、在宅療養を含め介護量を軽減するための工夫が求められる。このような社会資源の利用は自己申告制であるため、どのような援助がありどこに相談するかを紹介する。
G.アクティビティー
QOLの確立のため、気晴らし、生活にリズムを持たせるなどの目的で用いる。過負荷とならないような軽作業が一般的である。装具・自助具の適応が必要なことが多く、細かい作業は適さないため、読書、ワープロ、型染めなどが適応できる。また、車椅子操作または介助による散歩は、生活環境に変化を与え気晴らしになる。
(ADL全介助:重症度6〜7)
機能訓練よりも二次的合併症の防止・改善や、精神的支持が中心となる。特に、コミュニケーション手段の確保が、終末まで人間的尊厳を保ちながら過ごす上で重要となる。
A.二次的合併症の防止・改善
@疼痛:ポジショニング、体位変換などで局部の圧迫を避ける。疼痛が出現した場合、温熱療法、マッサージなどが有効なことがある。
A感染:誤嚥の防止、カニューレ・留置カテーテルなどの管理があげられる。嚥下障害がみられた場合は、医師の指示を仰ぐ。吸引機の適応も考慮される。
B.コミュニケーション手段の確立
@機器:トーキングエイド、コンピューター、電子手帳などの適用を、残存機能をふまえて機種やスイッチの形式の選択を含め行う。タッチスイッチまたは瞬きを利用したスイッチが有効なことがある。
A文字盤・コミュニケーションボード:瞬き、口の動きなど行いやすいサインを選び、順番に指さされる
文字または項目に応答するよう指導する。透明アクリルの文字盤は、患者の表情・目や口の動きが見やすいため、家族や看護婦など慣れたものには便利である。
C.精神的苦痛の緩和および心理的援助
訴えを知る上でコミュニケーションが図れることが重要、アクティビティーが有効なこともある。
D.家族指導(介助法・公的資源の紹介)
人工呼吸器やフィーディングチューブの管理など、全身管理への注意が必要で、介助者の負担も増える。福祉制度・マンパワーの紹介などにより、体力的・精神的援助が望まれる。ALS協会にて患者・家族とコミュニケーションを図ることで心理的支持を得られることも多い。
E.アクティビティー
コミュニケーション機器を利用した、または介助者の代筆による自己表現が中心となるため、手記、手紙、読書などがあげられる。車椅子など移動手段が得られる場合は散歩もよい。
参考文献
・ 臨床神経内科学 平山恵造 株式会社南山堂
・ メリット神経病学<第3版> L,P,ロウランド 訳、萬年徹・宮武正、株式会社医学書院
・ 図解 作業療法技術ガイド 石川斉・古川宏 株式会社文光堂
・ OT臨床ハンドブック 聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部作業療法科、株式会社三輪書店
■ALS 目次
@ALS 筋萎縮性側索硬化症の原因
AALSの症状
BALSの特徴
CALSの評価
DALSの治療
EALSの治療A重傷度分類に基づく治療
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