失調症 |
■失調症 目次 @概要 A 障害部位による分類 B症状 C特徴・注意点 D評価 E上肢についての試験 F下肢についての試験
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1.測定異常
視覚的に異常がないにもかかわらず、随意運動を目的の所で止めることが出来ない現象。この症状は視覚の影響を大きく受ける。特に運動失調では、眼球運動障害が多いので注意が必要である。『測定過小』と『測定過大』がある。
主動作筋と拮抗筋を交互に運動させるような迅速でリズミカルな反復動作を行う際、リズムが乱れ、不規則でぎこちない運動になる。ただし、運動麻痺、筋緊張の亢進、関節の異常、深部感覚の障害でも出現するので注意する。
上肢を伸展させ、示指で同側の耳たぶを真っ直ぐに指してもらうと、指先が三角形の一辺を真っ直ぐ行かずに、二辺をたどるようになる。特に《小脳性運動失調》でおこる。
各筋の働くタイミングがずれたり、同時に働いてしまうことにより、いくつもの関節が協調して運動することが出来なくなる。よって、運動に関与している様々な要素の障害が連合して出現すると考えられ、『運動分解』や『測定異常』なども含まれる。
目的物へアプローチを行う際、目的物に近づくにつれ、四肢の先端の揺れが激しくなっていく現象。
動作を始めようとするとき、また止めようとするときに、正常人よりも時間的に遅れる現象。
○立位時
体幹が前後左右に動揺し、不安定な姿勢になる。その為、患者は下肢を開大し、支持面を広げ、上肢を外転挙上させバランスをとろうとする。また、話し掛けるなど注意をそらせると、平衡を失い転倒することがある。片足で立つことは難しく、閉眼で立つことは不可能である。
軽症の場合、立位時で閉眼させると、体幹の動揺が大きくなる。さらに、ロンベルク試験を行うと動揺の出現が著明となる。
筋の活動として、正常では下腿三頭筋の持続性緊張が特徴だが、失調症では前脛骨筋の収縮が不規則に頻回に見られ、なおかつ相同性筋活動も見られる。姿勢保持では、静止時姿勢保持にも動作時姿勢保持機構が加わって作用している。
○坐位時
姿勢は不安定であり、背もたれがない場合や足底が床につかない場合など、体幹は動揺して円背となり、坐位を保持できないことがある。両足を開いて椅子に手をついていることがある。
四肢や体幹の症状に影響されて起こる。
下肢は両側に大きく開き(wide based gait)、膝を伸展したまま大きく踏み出す。そして、疾病が進行するほど開脚幅は広くなる。歩幅は不規則で体幹は左右に大きく動揺し、転倒することもある(酩酊歩行・よろめき歩行)。
上肢はバランスをとるかのように肘を伸展し、外転挙上した状態となり、方向転換するときにふらつくことが多い。
軽度の場合は、『継ぎ足歩行』などを行わせることで、体幹の動揺が起こりやすく、歩行障害が出現することがある。
筋の活動として、下腿三頭筋、外側ハムストリングス筋、大腿四頭筋で持続時間が不規則になり、前脛骨筋では非常に長い。また、振幅が一歩ごとにかなり異なり、歩行の時間的リズムおよび運動量の規則性が障害されるためと推測される。
ロレツが回らず、不明瞭で、とぎれとぎれ(断綴性)になり、急に大きな声を出してしまう(爆発性)のような、『失調性言語』とよばれる独特な話し方をする。
《小脳性運動失調》で認められる。
律動的な眼球の異常運動(眼振)が起こる。一側の一点を注視させると引き起こされることが多い(固視眼振)。
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